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今治の造船

韓国や中国との価格競争で日本の造船業界が構造不況にあえぐ中、今治造船(愛媛県今治市、檜垣幸人社長)の業績堅調ぶりが目立っている。
2018年度売上高は前年度比8.9%増の3911億円。17年に丸亀事業本部(香川県丸亀市)に全長400m級の超大型コンテナ船を建造できる新ドックを完成、18年に多種多様な船に対応できる船型開発センターも整備した。設計の3次元(3D)化や溶接ロボット導入も積極的だ。今治造船の強みを探る。
部材、瀬戸内ですべて調達
「厚板や舶用機器などの構成部品を瀬戸内エリアですべて調達できることが当社の強み」。檜垣社長はこう強調する。
ジャパンマリンユナイテッド(JMU、横浜市西区)や三井E&S造船(東京都中央区)、川崎重工業、三菱重工業、住友重機械工業―。国内建造量ランキングでは03年以降、これらの総合重工系大手を抑えて、今治造船の1位が続いている。
国内大手は韓国との競争で付加価値が高いLNG船などにシフトした企業が多かったが、韓国も同じ戦略を取ったため価格競争が激化し収益体質が悪化。
一方、今治造船は瀬戸内エリアで中小造船会社の合併を繰り返し、グループの売上高は18年度に00年度比で3.1倍強、建造量もほぼ3倍になった。「鋼材使用量は国内ではトヨタ自動車に次ぐ第2位」と檜垣社長は胸を張る。
鋼材の使用量が多いことは、鉄鋼メーカー大手に対して価格交渉力が強いことの裏返しでもある。加えて同社の工場拠点は瀬戸内エリアに集中し、西日本に10工場・建造ドック12本を完備する。
スチールハブやブロック組立工場などの多くが、造船所と目と鼻の先に立地する。鋼材を切断して曲げ加工、溶接を行い、ブロックを組み立てて造船所に海上で輸送する。この一連の工程がグループ間物流によってすべて一元化され、しかも自社所有船を使うため運航コストも安い。
主機関やプロペラ、ボイラや配電盤、甲板機械などの舶用機器メーカーも、瀬戸内エリアに多数集積している。「瀬戸内サプライチェーン」や「瀬戸内海事クラスター」などと呼称される由縁だ。
「中国と韓国は日本より人件費が安いが、23万点もの船舶部品をすべて自国で集めるのは無理。日本や欧州勢から調達することになる」と、檜垣社長は指摘する。部品調達には当然、輸送費と輸送時間が上乗せになる。「我々はアセンブリー産業。もし海外に出るとなると、これだけの部品メーカーを中国などへ連れて行かなければならない」。檜垣社長は、瀬戸内エリアで資材・部品調達が完結できる利点を強調する。
設備増強、韓国勢に対抗
檜垣社長は造船業界の今後を占う上で、世界粗鋼生産量の推移に注目する。
日本鉄鋼連盟(鉄連)によると2018年の世界粗鋼生産量は約18億トンと過去最高を更新した。「粗鋼1億トンを生産するのに、その3倍の鉄鉱石や石炭、石油などが必要になる。新興国のアフリカを含め、これから世界各国でインフラ整備が進む。バルクキャリアの需要も堅調が続くだろう」と見る。
大型船の大量受注で安値攻勢をかけているのは韓国勢。それに対抗する意味もあり、17年に丸亀事業本部に長さ610×幅80×深さ11.7mの大型ドックを新設した。西条工場(愛媛県西条市)の長さ430mのドックより大きく、全長400mの巨大コンテナ船やタンカーも建造できる。
実際、国内外の海運大手から計13隻のメガコンテナ船工事を受注した。「丸亀と西条合計で年10―11隻を建造できる体制が整った。これがないと世界での受注競争に加われない」。檜垣社長はこう言って、闘志をむき出しにする。
大型模型船を用いた水槽試験場も18年に完成した。自前の試験場のため、注文を受けてからの船型設計を“順番待ち”することなく直ちに取りかかれる強みがある。生産能力と自前施設の試験場、分業化・同型船連続建造ノウハウを生かし、国際競争下で勝ち残りを図る考えだ。
同型船建造では瀬戸内エリアに10工場・建造ドック12本を持つ強みを活用、複数の工場で同型の船舶を並行して建造する。工場間でコストが比較できるため、自ずと合理化努力が進む。ノウハウも各工場で蓄積され、将来もう一段のコスト削減ができるとの読みもある。
溶接ロボットや3Dモデルの活用にも意欲的だ。ロボットでは小型部材を一面に並べて溶接する「平板部材用溶接ロボット」、小型部材を立体的に組み上げて溶接する「立体部材用溶接ロボット」を欧州メーカーと共同で開発中。3Dモデルとの連動で、部材をセットしなくても図面だけで読み込めるロボットも現場に導入し、競争力を高める考えだ。
「海外に出てドックを建造しても供給過剰になるだけ。日本のドックを活用するため、外国人に来てもらうことも必要。今後は外国人を使うノウハウが求められるだろう」と檜垣社長は指摘する。
安い人件費や調達コストを求めて中国企業と手を組む造船大手もいる中、国内建造派の今治造船にかかる期待は大きい。 (19/10/15 日刊工業新聞)

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